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世界でもっとも長く、もっともつまらない人生を送った人は、どんな人生を送ったのだろう、と、ふと考えてみる。


もちろん、「つまらない」というレベルには絶対的な尺度がないので、必ず1つに絞れるとは限らない。
(つまらない=面白くない、価値がない、意味がないなど。)


例えば
「生まれてすぐに筋肉が動かせなくなる病気を患い 100年間ベッドの上で過ごし 日課は1日3回の点滴と自動ベッドによる寝返り運動のみ」
という人生は、もっとも長くてつまらない人生のように思える。
しかし、寝返り運動のときにベッドから窓が見えれば、春は桜が、冬はパウダースノーやクリスマスにはしゃぐ子ども達が見えるかもしれない。
自分はこのガラス戸の向こうの世界に何一つ働きかけることが出来ないのだと思っていても、一生に一度くらいは心ときめく出来事が起こるかもしれない。
そう考えると、もっとも、と付けていいものかわからなくなる。


例えば
「2歳のころに円周率の正確な値を暗算で求める方法に気づき 100歳になるまでわき目もふれず我武者羅に計算をしたが その誕生日に最後の1桁が求まった喜びでショック死し 後には何も残らなかった」
という人生も、たいそう長くつまらない人生だ。
しかし、この人の主観としては充実した98年間であり、「つまらない」があいまいな定義である以上、そのことを完全に無視することは難しい。
そもそもこんな人たちはこれまでに一人もいないように思える。


過去にわたらない限り、いや、過去にわたっても解けないこの疑問。それこそ神の視点にでも立てれば、息をするよりも簡単に分かるのかもしれないが。
ああ、くだらないさ。